『月収』 原田ひ香
月の収入が異なる彼女たちなりの苦労や生活を覗き見
月の収入も立場も職業も異なる女性5人が互いに交わりあって進んでいく物語。低収入のために幾らかの税免除をしてもらった年金生活を送る女性。不動産屋さんに聞いた理想の生活像に賛同し定期収入を得ながら小説に専念する女性。将来を見据えて投資計画を立てて果敢に生きていこうとする女性。パパ活を専業として課した目標金額を達成し続けようとする女性。事業を畳み旦那の残した資産を持て余す女性。経験を最大限活かし事業を始めようとする女性。年齢も異なる彼女たちが今を生きるために迷いながらお金の得方・使い方を模索していく。
人間は収入を得なければ生きていけない。逆に言えばなんらかの定期収入さえ得られたら、生きていける
収入の得方を探索したい
働く理由は様々だ。多くの人が当てはまるひとつは「お金のため」、ひいては「生活する、生きていくため」。ならば生活ができるだけの定期収入が入ってくれば問題ないという考えだった。本書では、小説家が作品受賞した際に手にした賞金を元手に家賃収入を得ることをしている。不動産は確かに大きな元手が必要となるため、可能な人は限られるかもしれない。
物語上、本書にはこの1つのみの紹介だが、別の方法で定期収入を得る手段を見つけるのも楽しそうだと思う。「生きていける」という表現のとおり、これひとつあれば大きな力となるだろう。まずはなんといっても安心感。定期収入があり続ける限り、生活が保証されているようなものだ。ただ、誰しもがやろうと思うことでもなく、できることでもない。だからこそ、ひとつ手にしたら大きな自信になるだろうと思う。また、定期収入とはいえ、定期的な見直しや修正は必要となるだろう。雇用による稼ぎ方とは異なる面もあるため、異なる学びや知識がつく。利点をあげていくと、少しずつワクワクしてくる。
今の生活がどれだけ充実しているか教えてやりたい。けれど、こういう生活が苦手だという人もいるだろう。さびしくて、退屈でたまらないという人も。
自分にとっての幸せな生活
「充実」「満足」「幸せ」などなど、ポジティブな状態を示す言葉は数多あるた。これらの基準は人それぞれ。認知はしているが、理解はしていない、というところ。自分にとってを目指そうとしても、それがまずどんな状態なのかを知ることから始まる。今食べたいものがわからないほどには感情を抑えてきた私にとっては、感じることが第一の骨折り。そして、わからないから想像する。でも限界があるから、「一般的」や「周りの意見」を求めてしまうと、もう区別がつかない。私から見てなのか、見られる私のためなのか。「教えてやりたい」と思えるほど、貫いて手にした充実には較べるものも羨望のものもないのだろう。ここまで達するまで、追求してみたい。
ちなみに、上記引用の「今の生活」や「こういう生活」とは、ざっくりとお一人様のお家生活のこと。小説家が多くはない定期収入を手にし、寝食しつつも自宅に籠って執筆する毎日のこと。お金が足りなくなったらバイトに出ようと決めているものの、光熱費と食費が主のためあまりお金はかからないという。だから、人によってはさびしいし、退屈なのだ。
自分のためだけにいきるには、一生は長すぎるってわかった
何のために稼ぐのか
働く理由として、ひとつは「お金のため」、ひいては「生活する、生きていくため」であろうと前述した。しかし、そのためだけはいささか虚しさが伴う気がする。あるところまでは、収入やら貯金やら数値目標が馬力になるだろう。
労働のみの場合、年収700~800万円をピークに幸福度は落ちると聞いたことがある。必ずしも年収と幸福度が比例しないのが面白いところだ。この基準を知ったのは数年前のため、物価高や賃金の微量の底上げが行われている今は少しピーク値は変わるかもしれない。幸福度が高まるのであれば頑張れるものも、下がると難しくなる。そして皮肉なのは700~800万より高収入者の多くはこのピークの状態を経験しているということ。どこまで稼げば幸せなのかはまだわからない。ただ、どんな時もいくら稼ぐことになっても、たとえお金のために働くとしても、稼ぐためにしている行為自体を好きでいたいし、その行為をしている自分が好きな状態にしたい。
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