『恋とか愛とかやさしさなら』 一穂ミチ
プロポーズされた翌日。プロポーズすら夢心地の中告げられた婚約者が逮捕されたという話を聞かされる。初犯であり示談が成立したためすぐに釈放されたものの、2人の将来は一変する。謝罪を繰り返す彼と義両親、彼を突き放す義姉。娘の様子の変化に気づきつつ見守り続けてくれる父。お互いを知る友人や父と元同僚で相談できるカメラマンの師匠、父と離婚した母。周りの人の意見を聞きながら彼女は答えを模索する。
彼は被害者に再開する。女の子は自分の立場を利用して、彼に日常の不満やいろいろなことを吐露する。盗撮と痴漢には差があると自分を守っていた彼は、女の子の話を聞くうちに「性被害」と向き合う。犯罪に入らない、性的搾取に違和感を覚える。
問題のないカップルなんているわけないじゃん。大事なのは問題そのものじゃなくて、自分がどこまで許容できるかでしょ
人それぞれに帰納する
「どこまで」の線引きでパッと頭に浮かんだのは「どこからが浮気なのか」ということ。これは聞いてみないとわからない気がする。2人きりで会った時点でアウトという人もいるが、性行動を基準とする人もいれば、隠したらとか心が揺れたらとか行為自体は明確な判断にならない答えを持つ人もいる。行為自体で判断できない場合、ジャッジは相手がそう感じたらとなるから難しい。
あとは、以前、友達に相談されたことがあること。よく泣く彼氏と今後どうするか。彼女は友達の友達らしい。
*彼女が友達を優先しすぎると寂しくて泣いてしまう。
*彼女に悲しいことがあったら辛くて泣いてしまう。
私の友達、つまり私に話をした子は束縛のような意味合いで厳しいという判断。前者に焦点を当てたかなと思う。私は私の感情が蔑ろにされているから難しいという判断。後者を聞いて即決だった。同じ結論でもそこに至る経緯は異なるから、「どこまで許容」の範囲も異なるのだろう。人それぞれだから本人に聞かなきゃわからないというよくある話に帰納する
どうしてだろう。恋とか愛とかやさしさなら、打算や疑いを含んでいて当然で、無垢に捧げすぎれば、時に愚かだ幼稚だ批判される。なのに「信じる」という行為はひたすらに純度を求められる。
感情にある純度の正体
純度ってなんだろう。液体で言えば澄濁ぐあい。人間で言えば、どのようにして測るのだろうか。たとえ相手が真実を口にしていても、私が疑いの目を向けたら、私からは疑わしく思う。真実を透明、疑念を混濁とすると、相手は透明だったのに私によって濁りが混ざった結果となる。そして、濁ったことがわかった瞬間、きっと相手は濁りを強めるだろう。だから、純度を求められても難しいと思った。
「許す」という行為も、おそらく「信じる」と同じく純度が求められるのだろうと考える。許されるよりも許すほうが難しいのではないかと思う。「許すと決めたらその後はその話を引き出してはいけない」と聞いたことがある。一度許すと決めたのなら迷いを見せずに突き通せと受け取った。環境や状況により感情が揺らぐことは往々にしてある。でも、感情の変化で変えてはいけないというのだ。信じるも、一度信じると決めたことは揺らぐ姿を見せることなく進めということだろうか。だから、言葉にしていることはその状態ではないと受け取るのだろう。
女のディスりは皮膚にちくちくきて、男のディスりは骨とか内蔵にくる感じ。
女からつけられた傷と男からつけられた傷
なんか深いと思った。でも事実かもしれない。
女のディスりなんてたくさん受けてきたはず。思春期なんて、カーストがあって、マウント取る人がいて、同性ゆえの勝ち気があって、その場の空気がある。たぶん私もたくさん言って言われてきた。でも覚えていることなんてほんの一握り。部活動の試合終了後に言われた「頑張れてなかったね」の一言。これはインパクトが強かった。ただ悲しかったが囚われるような感じはなかった。傷はつくが、泣いたりご飯食べたり寝たりしている間に、少しずつ治っていく感じ。
男から言われることは少なかったけど、引きずったのはこっちだった。「メイクが合っていない」これが私につけられた評価だった。つけた人はメンズメイクをしている人でもなければ、私から見てそれほど外見に気を遣っているように見えない人だった。たった一言。これにずいぶんと引きずった。動画や本で勉強してた自負もあったのに根から踏み倒された気分。だからパーソナルカラー・顔タイプ・骨格の診断にいった。もう一度、メイク動画や話題のメイク本を見た。内側から、この場合自信をつけることで癒すしかわからなかった。今もまだ残ってる。頭にこびりついてる。気にしないことはできても、完全に消えることはない気がする。
正直な話、人間関係を築くうえで大きなネックになっている。今でも男の人の目は怖い。自信をもっていたからこそ、へし折られて、補強したけど、また傷つけられたらとへっぴり腰になっているイメージ。過去と向き合いながら私自身を絶賛癒し中。変化が訪れることを願って。
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